アルミ砂型アンプケースの開発

◆振動とスピーカー

 当店は今までスピーカーに多くの問題があると感じ開発をしてまいりまし た。
 その過程で振動と過渡特性に大きな関係があることが解かりました、それは つまりSPユニットとエンクロージャーの関係と言い換えても良いといえます。

 SP振動板が音楽信号によって振動すると当然それを固定しているバッフル に振動が伝わります。この時バッフルに伝わった振動が次のSP振動板の動きを 疎外してしまいます。
振動によっておおよそ3つの現象が考えられます。

1)振動を熱に変換する。
2)振動によって共振させる。
3)振動をなるべく早く外に共振させずに放出する。

 以上の3点です、実際には3つの現象が同時に行なわれているはずですが問 題はそのウエートをどこに置くかだといえます。実験結果から申しますと、

1)振動を熱に変換すると音の量感は増えるが音の伸びが押さえられてしまう
当店は激しいパルスの立ち上がり立ち下がりを求めているのですから結果は 逆になり不採用です。

2)振動によって共振させる
この方法は昔の欧米の名器に多く見られたやり 方です、楽器なども正にこの理屈から成り立っています。しかしこの方法はある 特定の付帯音が付きまとい、楽器の固有の音をSP固有の音色で色付けしてしま います。また楽器とオーディオの最大の違いは楽器の場合はバイオリンはバイオ リンの音だけ、ピアノはピアノの音だけを表現すれば良いのに対して、オーディ オはあらゆる楽器の音を再生しなければならず、普通同時に複数の楽器を再生す るという離れ業をしなければなりません、そのためにはあくまで正確さが要求さ れます。つまり楽器は固有の音を追及しオーディオは正確さの追及になります。 また共振は量感は増えますがパルスの伸び自体は押さえられてしまいオーディオ 向きとは言えません。

3)振動をなるべく早く外に放出させる
これだけが当店がオーディオに求め る特性を満たしてくれる方法です、振動をなるべく早く外(エンクロージャー、 アンプケース外)に放出することです、如何に速く定在波を減らすか!さもない と次の振動をするときに定在波が次の振動の動きの邪魔をし又余計な付帯音も付 けず、楽器固有の音をありのままに再現するためには前の振動が邪魔なのです、 その上ピークが一番延びます(過渡特性が良くダイナミックレンジが大きい)正 にオーディオ向きです。

 以上の結果から当店は定在波を速やかに放出させるために材質は音速の早い アルミを採用し、余計な共振を避けるために厚くしたのです。

◆振動とアンプ

 アンプに関しては当初は電気信号同しの増幅なので、あまり問題は少ないだ ろうと考えていました。
 ところが実際にはむしろアンプの方がより大きな問題を抱えていたというの が実情です、以前からも振動を止めると音が良くなる言われていましたが、前述 のスピーカーに於ける振動との関係及び過程はアンプにおいても同様のことがい えます。むしろ扱う周波数が高くなった分、依り重要になったと言えます。振動 に関してはアンプとスピーカーは同じであると言えます。
 これまで当店がアンプについて理解していたことは 、

イ)デジタルアンプのスルーレイトが桁違いに良い。
ロ)スイッチング電源に換えると音のスピードが速くなる。

 今回製作したデジタルアンプのCPUは50MHz、採用したスイッチング 電源は150KHz、これだけ高い周波数ですから逆に浸透力の強い振動が発生 します。必然的に大量のパルスが発生しているはずです。論理的にはCPUやス イッチング電源のスピードを上げれば上げるほどパルスに対する反応は速くなる はずですが、発生する振動が反作用として働き、実際にはどこかで頭打ちになる はずです、逆にCPUやスイッチング電源の振動を共振させずに速やかに外に放 出できればパルシブな音楽信号の追従性が飛躍的に高まります。
 デジタルアンプの場合の問題は変換効率が非常に高く(当店の場合88%) 小型であり振動周波数が非常に高いために、見た目にはあまり振動対策など必要 ない様に感じてしまうことです、スイッチング電源なども小型で軽く大きなトラ ンスを組み合わせた電源と比較するとブーンという50Hzの振動も無く当然強 度の高いシャーシが必要になるとは考えにくいことです、しかし良く考えて頂き たいのはたとえ50Hzあるいは60Hzとはいえ電源周波数の変化によりトラ ンスに振動と音が発生するという事実です、この振動は当然シャーシや他の部品 にも伝わります。電流の変化が振動を発生するなら振動は電流の変化を起こさせ ます。つまりスムーズな電流の変化を疎外します。ましてや150KHz、 50MHzという高速の振動がどれだけ音楽信号に影響するかは計り知れませ ん、事実EDA−10に於いてアンプの上に約10Kg厚さ50mmの砂型アル ミ台(放振板)をのせて行き10台のせてもまだ音が変化していくという事実が 何より物語っています。

 この事実により当店はよりしっかりしたケースの必要性を強く認識し今回の 開発に至った訳です、高周波の振動がいかに処理が大変か、またそれがアンプや 電源の見た目の安易さとは全く正反対にいかに激しいものか、そして最後は振動 対策で限界値が決まってしまうのではないかと当店は考えています。
 ハイスピード化はデジタル音源の登場により絶対に避けて通れ無いのですか ら振動対策がこれから最も重要な課題の一つになると思いますアンプでもスピー カーの所の 3)振動をなるべく早く外に共振させずに放出する、が有効です、 しかしアンプの場合は周波数が高いだけにスピーカーの場合よりも対策が厄介に なります。そこで前回製作したEDA−10を今回は徹底的に押し進めた製品の 必要性にせまられましたまず、前回使用したアルミ圧延板(10mm)からアルミ 砂型鋳物に変更、同時にネジ止め箇所を極力避け上下二重構造にし、薄い所でも 20mm、厚い所では143mm、重量30Kgのケースが完成しました。SPやピ ンなどの端子板も圧延を避け鋳物にし、部品なども大幅に入れ替えし、基盤の裏 側をケースにエポキシで直接固定、勿論配線はオール純銀線、銀ハンダを使用ま た回路も電源を含む完全モノラル構造にしBTLを採用、最大出力も50W/5 0Wと大幅に大きくしました。

 アナログアンプで経験してきた出力とパワー感との関係はここでは過渡特性 があまりにも違いダイナミックレンジが大きい為にあまり通用しません、またス ピーカーとアンプの違いはスピーカーの場合は全帯域を一つのスピーカーで再生 することは不可能ですがアンプの場合は可能だということです、しかしサインカ ーブの増幅はさておいてパルスの増幅において全帯域を瞬時に立ち上げ立ち下げ るというのはやはり非常に困難なことなのです。
 スピーカーの項で振幅と周波数の関係からも解かるように周波数が1オクタ ーブ変わるごとに振幅は4倍あるいは1/4倍になります。これは音圧が一定と いう条件でのことであり実際には何十dBという大きな変化を音楽信号はする訳 です、仮に6オクターブ周波数が違うと同一レベルでも振幅は4.096違うことに なります。これにたった20dBの音圧差が剰されると約と40.960倍になります。 CDの帯域は10オクターブにも及ぶ訳ですから、想像を絶する激しい変化であ ることがお解かり頂けると思いますつまり0.01ccから風呂桶1パイの水を瞬時に 出し入れする能力を求められる訳です、それがサインカーブのようななだらかな 変化であればさほど難しくはないはずですが、音楽信号はあくまで不成型パルス の連続です、人類は楽器に於いて逆により激しい複雑な振動を求めて古来より発 展してきたと言えるのにオーディオだけが激しい変化を拒絶するようなスピーカ ーやアンプを高く評価するような風潮が蔓延しているのは何故でしょうか。


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